大判例

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東京高等裁判所 昭和57年(ラ)823号 決定

よって検討するに、本件記録によれば、抗告人らが、さきに東京地方裁判所に対し、相手方を債務者として、「(1)抗告人らが富士平原ゴルフクラブの正会員として施設利用権を有する地位にあることを仮に定める。(2) 相手方は、抗告人らが、ゴルフのプレー及びプレーの予約をすることを妨害してはならない。」との仮処分の申請(同裁判所昭和五七年(ヨ)第二〇五二号事件)をしたところ、同裁判所は、昭和五七年一〇月二一日、「抗告人らが相手方経営の富士平原ゴルフクラブの正会員としての地位にあることを仮に定める。」との前記申請の趣旨(1)と同旨の限度で右申請を認容したこと、そこで、抗告人らにおいて昭和五七年一〇月三一日相手方経営の富士平原ゴルフ場(以下「本件ゴルフ場」という。)においてプレーの申込みをしたところ、相手方の取締役支配人草刈亮から社長命令により受付を拒否する旨の通告を受け、当日プレーをすることが不可能となったこと、これより前同月二八日、抗告人岩堀において、翌一一月二八日のプレー予約をすべく右ゴルフ場の受付に電話により申込をしたが、上司の指示によるものとして予約の受付を拒絶されたことを一応認めることができる。そこで、抗告人らは裁判所に本件仮処分申請に及んだところ、原裁判所は、先に発せられた仮処分決定によって抗告人らの正会員としての地位が一応保護されており、ゴルフのプレーを拒絶されたからといって、抗告人らに生活上又は名誉に関し著しい損害が生ずるような事情はなく、他に強暴その他必要性を認めるに足りる疎明も存しない、としてこれを却下したことは本件記録上明らかである。

ところで、仮の地位を定める仮処分は、権利関係が確定しないために生ずる債権者の著しい損害を避け、又は急迫な強暴を防ぐ等の必要と認められる場合でなければこれを認容すべき保全の必要性がないことに帰するところ、いわゆる預託金会員制のゴルフクラブにおける会員は、ゴルフ場を経営する会社に預託した入会金の退会の際における返還請求権のほかは、右会社の施設であるゴルフ場を非会員より優先的かつ継続的に利用する権利(いわゆるプレー権)を有するにすぎないのが、大多数のゴルフ場における実態であることは周知の事実であり、退会時以外においては右プレー権のみが唯一の権利関係として存在するにすぎないのであり、したがって、預託金会員制のゴルフクラブの会員と主張する者が会員たる地位を仮に定められても、当該ゴルフ場経営者がその者のプレーを拒否するならば、会員たる地位を仮に定めた仮処分決定はなんら実効の伴わない画餠にひとしいものに帰するのである。その上、一般にゴルフクラブの会員は自己の属するクラブのゴルフコースに強い愛着を持ち、会員としてプレーすることはいわゆるビジターとして他のゴルフ場でプレーをすることによっては到底得られない充足感をもたらすものであり、また、経済的負担の程度においても著しい差異があることはこれまた周知の事実である。

本件ゴルフ場における会員の組織である富士平原ゴルフクラブの正会員の地位が、前記したところと同断であることは、本件記録に徴し窺われるところであり、また、本件記録中の抗告人ら名義の各報告書と題する書面によれば、抗告人三浦は昭和三四年の本件ゴルフ場開場以来、同山田、同岩堀は昭和三九年以来それぞれ正会員となり、その間、抗告人三浦は競技委員長及び理事等を、同岩堀はコース委員、競技副委員長を勤めたことが認められ、いずれも本件ゴルフ場に深い愛着を抱いていることは推認するに難くないところである。かような事情に加えて、正会員の地位を仮に定めた前記仮処分決定に対する異議の申立もなされていないという現状においては、抗告人らは相手方から本件ゴルフ場におけるプレーを拒否されることにより多大の精神的苦痛を受けていると一応認めることができるのであって、本件記録に現われた前記仮処分決定に至るまでの経緯及びその後の事情に照らし、抗告人らにおいて現に著しい損害を受けている場合にあたるというのが相当である。してみれば、本件において、相手方に対し、抗告人らが本件ゴルフ場でゴルフプレーをすることを拒絶してはならない旨の仮処分発令を発するに足りる必要性は一応認められるとして妨げないというべきである。

(鈴木 吉井 河本)

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